第2回:アメリカにおけるスポーツ広告主
2005/03/27

3月21日付け、SportsBusiness Journalに、"Top 50 Sports Advertisers "として、2004年にスポーツ関連番組に広告を出した企業の上位50社が掲載されました。これら50社が、総広告費の中で、スポーツ番組に費やした広告費の割合(スポーツ広告費/総広告費=『スポーツ広告費率』)は平均33%。ほぼ3分の1に当たります。日本の企業がスポーツイベントや番組にどれだけの広告費を使っているのかは定かではありませんが、 こういった"Sports Advertisers"というカテゴリーが存在する時点で、アメリカの広告市場におけるスポーツ番組の重要性がうかがえるところだと思います。


◆表1: 2004年 アメリカスポーツ広告主 上位10社◆

順位 会社名 スポーツ広告費 総広告費 スポーツ広告費率 前年比
1 Anheuser-Busch $293,400,122 $352,155,950 83.30% +34.50%
2 Chevrolet Motor Division $219,995,815 $370,183,300 59.40% +61.90%
3 Cingular Wireless $164,473,472 $486,382,918 33.80% +243.60%
4 Ford Motor $143,075,265 $458,969,259 31.20% +5.00%
5 Coca-Cola USA $142,761,624 $295,540,493 48.30% +121.30%
6 Visa International $136,070,954 $277,568,582 49.00% +72.20%
7 Miller Brewing $131,815,521 $191,203,635 68.90% +5.10%
8 Procter & Gamble $130,635,079 $1,799,278,578  7.30% +85.80%
9 Nissan North America $111,128,768 $307,594,351 36.10% +67.60%
10 IBM $105,425,864 $192,453,719 54.80% +25.90%
                          (Sources: Nielsen Monitor-Plus, SportsBusiness Journal research)


表1は、SportsBusiness Journalから、2004年のスポーツ広告主上位10社を抜粋したものです。1位のAnheuser-Buschは、Buderwiserなどのキラーブランドを抱えるビール会社、 2位はシボレーでお馴染みのGM系の自動車メーカー、3位のCingular Wirelessは携帯電話事業などを中心に売り上げを伸ばしている通信会社です。昨年はオリンピックイヤーということもあり、多くの企業がスポーツ関連番組への出稿を増やした結果となりました。IOC(国際オリンピック委員会)のトップスポンサーである5位のCoca-Cola USA、6位のVisa Internationalも、それぞれ前年比121.3%、72.2%と高い伸びを示しています。


今回、上位50社のリストを改めて見直してみたところ、『スポーツ広告費率』が特に高い業界としてビール業界が挙げられることに気づきました。下の表2はアメリカの3大ビール会社のマーケットシェアとスポーツ広告費の割合を示したものです。シェア(売り上げ)に応じて広告費の大小も決まっているというのは納得のいくところです。そして各メーカの『スポーツ広告費率』は、Anheuser-Busch, Miller Brewing, Coors Brewingそれぞれ、83.3%、68.9%、77.0%となっています。他業界(上位50社平均33%)に比べて明らかに高いことが分かります。

◆表2: 米3大ビール会社 スポーツ広告費率◆

会社名 シェア(2003年) スポーツ広告費(2004年) スポーツ広告費率(2004年)
Anheuser-Busch 49.9% $293,400,122 83.30%
Miller Brewing 18.1% $131,815,521 68.90%
Coors Brewing 10.8% $82,244,902 77.00%
            (Sources: S&P Industry Surveys, Nielsen Monitor-Plus, SportsBusiness Journal research)

スポーツ番組にどれだけの広告を出すかどうかは、各企業が掲げるブランド戦略やターゲットとする消費者などによって大きく変わってくると思います。アメリカ最大のスポーツ専門チャンネル、ESPNの調査によれば、最もスポーツに関心がある層として「男性の18歳〜54歳」を挙げています。また以前、オハイオ大学スポーツ経営学科の卒業生で、現在Coors Brewingでスポーツイベントなどを中心にしたブランド戦略を担当されている方からお話を伺った時、「ビールの嗜好というのは、若い頃の好みがそのまま年齢を重ねていっても続いていくことが統計的に明らか。よって我々は、未成年10代の男子層へのイメージ戦略を草の根的に行い、20代の男子層へのブランド戦略を特に重視している」 といったことを言われていたのを覚えています。ビール業界における『スポーツ広告費率』の高さは、ビール業界とスポーツ番組のターゲットが重なっていることが大きな理由としてあると思います。

3社とも『スポーツ広告費率』が高い中で、各社がそれぞれどのようなマーケティング戦略をとっているのかは興味深いところではあります。現在、Anheuser-Buschがビール業界の半分のシェアを占めているのに対し、Coors Brewingはたった10%です。しかし10年、20年後も、このシェアが続くとは限りません。2001年、日本のキリンとアサヒのシェアが逆転したことは大きなニュースとなりましたが、1985年、アサヒビールのシェアが9.6%にまで落ち込んだ時(当時キリンは61.4%)、誰もこの逆転劇を予想できなかったのではないでしょうか?

スポーツマーケティングのノウハウが高度化されていくにつれて、日本でも、スポーツ番組やスポーツイベントに広告を出す企業が増えていくのではないかと思います。アメリカ各企業における『スポーツ広告費率』の違いを見るとき、各企業のブランド戦略、そしてスポーツ番組のターゲットと企業の消費者の整合性というのは、改めて重要なポイントだと感じています。

(2005年3月27日 M.S.)


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