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第4回:フィラデルフィア視察 |
2005/04/25 |
3月中旬、春休みを利用してフィラデルフィアに行きました。今回の主な目的はプロスポーツ施設の視察で、Lincoln Financial Field(リンカーン・ファイナンシャル・フィールド),
Citizens Bank Park(シチズンズ・バンク・パーク),そしてWachovia Center(ワコヴィア・センター)に行ってきました。
◆Lincoln Financial Field (http://www.lincolnfinancialfield.com/)
Lincoln Financial FieldはPhiladelphia Eaglesの新スタジアムとして2003年に完成しました。そのスタジアムの形は、チーム名に由来し、鷲が羽ばたく瞬間をイメージしています。今回訪れた時期はツアー期間でなかったのですが、オハイオ大学の卒業生のネットワークを利用して特別にツアーをさせてもらいました。
Lincoln Financial Fieldには北と南に二つの大きな入口がありますが、そこはMercedes Benz Gate, Chrysler Jeep Gateとメインスポンサーである2社がその命名権を持っています。イーグルスのスポンサーシップは多くの企業が競ってスポンサーを希望するまさにキラーコンテンツです。通常多くのチームやスタジアムのスポンサーシップは"一スポンサーカテゴリー・一企業" が一般的です。ただイーグルスでは、その人気の高さからか、BudweiserとMillerというビールカテゴリーに属する両ライバル会社が同時スポンサーになっています(右写真)。
Lincoln Financial Field では他のスタジアムと同じようにスィートルームを重要な収入源としています。 2階はPresident
Suiteと呼ばれる特別スィートルームがあり、3階にはClub Suiteと呼ばれる特別部屋があります。金額は、President Suiteが30万ドル(約3,300万円)、Club
Suiteが17.5万ドル(約2,000万円)です。 この金額はレギュラーシーズンのホームゲーム8試合とプレシーズンマッチ2試合の10試合の値段で、ポストシーズンに関しては改めて契約するということです。それでもPhiladelphia
Eagles は、シーズンチケット、スィートルームどちらも購入待ちが多くいる大人気球団です。改めてアメリカンフットボールのビジネスの大きさとその人気を窺うことができました。
◆Citizens Bank Park (http://www.ballparks.com/baseball/national/phibpk.htm)
Citizens Bank Parkは昨年オープンした新しい球場で、Philadelphia Philliesの本拠地です。ここでは、現在Philadelphia Philliesで働かれている日本人、伊藤直也さんにお会いすることができました。伊藤さんはチケットセールの部署で働かれていて、年間チケットのグループ向け販売などを主に担当されているということです。実際にアメリカメージャースポーツチームで働かれている日本人の方のご意見や感想は勉強になりました。フィリーズはその人気と成績ではイーグルスと大きな隔たりがあり、それがビジネスの難しさにつながっていると感じました。事実、フィリーズのチケットセールスの部署には約15名のセールスマンがいるのに対し、イーグルスはたったの5人ほどのようです(ちなみにフィリーズの15名も、他の球団に比べると非常に少ないとのことです)。昨年度のフィリーズは新スタジアムの好影響で2003年の平均観客動員数28,973人から2004年には40,589人に増えましたが、今年はそれを継続できるかどうか注目すべき点です。
◆Wachovia Center (http://www.comcast-spectacor.com/siteInfo/landingPage_arenaInfo.asp)
Wachovia Centerは1996年夏にオープンした多目的アリーナです。当時はFirst Union Centerの名称でスタートしましたが、
2002年7月に金融会社であるWachoviaが命名権を購入し現在のWachovia Centerになりました。Wachovia Centerは、NBAのPhiladelphia
76ersとNHLのPhiladelphia Flyersのホームアリーナですが、今年はNHLのロックアウトもあり、そのビジネスは76ersが主になっています。NBAで最も人気のある選手の一人であるAllen
Iversonがプレーしている76ersですが、NBAファイナルに行った01-02シーズンに平均観客動員20,560人を記録して以来、その数は下降を続けています。
この減少率は現在NBAチーム中ワーストです。これには多くの要素が影響していると思いますが、その一つとしてNBAのゲームの長時間化とCMの為のタイムアウトが問題があげられています。これは76ersだけの問題ではなく、Melvin
Helitzer著「The Dream Job」には、過去NBAプレーオフのデトロイト対ポートランド戦で試合終了最後の120秒に27分掛かったという話もあります。私が当日観戦したデトロイト・ピストンズとの大一番は76ersの大勝となりましたが、試合終了5分前には多くの観客が家路に向かい始めていました。私の後部座席の青年が「46ドルも払って試合終了まで見ないってどういうことだ!」と叫んでいたのが印象的でした。試合の長時間化は、観客の帰宅を急がせるという皮肉を生んでいるようです。観客動員数に問題を抱える76ersですが、試合中のプロモーション企画などは非常に斬新で多くの企画を学ぶことができました。
アメリカ人の中でフィラデルフィアは、交通が比較的乱れ、クラクションがよく鳴り、 かつてはイーグルスがDonovan McNabbをドラフト1位で獲得した際にファンがブーイングし、最近ではTemple大学男子バスケットボール部の監督が選手に、相手チームの選手に怪我をさせるように命じて謹慎処分を受けたりと、嫌な街だという人もいます。
しかし、NFLのSuper Bowlに出場し2年前にスタジアムを新設したイーグルス、MLB最新のボール・パークの一つを本拠地とするフィリーズ、
そしてNBAで最高の選手の一人であり、今年のオールスターでMVPを獲得したAllen Iverson率いる76ersと、アメリカのメージャースポーツを堪能できる場所としては、フィラデルフィアは恐らく最高の場所だと言えます。
日頃Athensという大都市ではない街で勉強している私にとって、春休みのフィラデルフィア旅行は、アメリカのメージャープロスポーツのトレンドを学べる貴重な時間となり、有意義なものになりました。
(2005年4月25日 T.S.)
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